気球実験、その後
語り手:岡田英人(おかだ・ひでと)

● 気球実験の失敗

気球実験は、痛かったです。けっこう余裕で臨んだのですが、通信が途中で切れてしまうという結果に終わってしまいました。短距離ではまったく問題なく、スムーズにできていたことが、遠距離で通信をやってみて失敗したことで、初めて分かった事がたくさんありました。通信を専攻している学生にとっては当たりまえのことも、機械系の勉強しかしてきてない自分たちにとっては、未知の世界でした。開き直ってはいけませんが、「何も知らないから、何が問題なのかもわからない」という状況でした。

気球実験で分かった通信系の問題点は数多くあるのですが、最初は自分たちでは、どうして通信できなくなったのか分かりませんでした。生じた不具合を列挙して、白子さんや東工大無線研の船田さん、市販の無線機を作ってくれた会社(アルインコ)の技術者にメールで質問しました。その方々の色々なご指摘や、こんな試験をやってみたら?というアドバイスがあったからこそ、通信系は宇宙でも動いたのだと思っています。

experiment

● 気球実験の教訓

まず、低温での動作が問題であることがわかったので、通信機を恒温層に突っ込んで、無線機を低温にしていろいろと試験をしました。常温と低温では信号レベルが変動するので、その調整を行ったりしました。このころ、恒温層の前で徹夜することが結構ありました。

また、CW送信機の内部回路からの電波が受信機に干渉する形になって、地上からのコマンドが通りにくい構成になっていました。これは、CW送信機の回路を変更してもらうことで解決しました。アンテナ調整もうまくいっていなかったこともわかり、調整を行いました。

証言:占部 智之(うらべ・ともゆき)
スプリアス対策、低温対策、アンテナマッチングなど通信系全体としては様々な工夫をしましたが、僕が担当したのは通信機シールドボックスを作ることでした。気球実験の時は、3つの送受信機を搭載しましたが、各無線機をむき出しのまま隣り合わせで配置していたので、送信機が生成する強電界によって受信機の感度抑圧という現象が起こり、受信機が受信不能に陥ってしまいました。(送信周波数のスプリアスが受信周波数と近接していたのが大きな原因でした)そこでシールド兼固定用の通信機ボックスを作ることが僕の役割となりました。当時はそれなりに考えて作ったつもりでしたが、今考えると組み立て・分解のしやすさ、配線の引き回し、振動対策など改善するべきところはまだまだたくさんあります。

結局、気球実験で分かったことは、このままでは宇宙にいったらまともに通信系は動かないということでした。この実験が無ければ、今ごろ東工大のCubeSatは地上と通信できていなかったと思います。