振動試験  2001年6月14−15日
語り手:イトコン(伊藤 孝浩 いとう・たかひろ)

振動試験って、すごく大事ですね。あの前後で、アンテナのラッチ機構を全面的に変更することになりました。もし試験をやらなかったら、アンテナが展開せず、通信も何もできなかった可能性もあります。

キューブサットは、打ち上げのとき、アンテナをくるくると巻いていて、宇宙空間に出たら、とめをはずして、自動的にアンテナが展開するように設計されています。このとき、どうやってアンテナをとめておき、それを絶妙のタイミングではずすか、を考えないといけません。ニクロム線で焼ききる仕組みが伝統的なんですが、僕らは「電磁プラジャー」というのを採用することにしていました。これは、電流を流すと磁力が生じるという電磁石の力を使っていて、再現性に勝るんです。要するに、何回繰り返しても同じ結果が得られるってことです。何度も実験しましたが、いつも、うまくいっていました。

振動試験に行ったのは、宮村、小笠原と僕の三人でした。これは構造系の担当だったんです。宮村がリーダーをやっていました。カンサットのときは、筑波のNASDAのものをお借りしたみたいですが、このときは宇宙研の施設をお借りできたので、相模原まで行きました。ランダム振動試験では、強度にレベルがあって、弱い方から試して、だんだん強くしていきます。いい調子でやっていたら、レベル3か4くらいでやったとき、思いがけないことが起こりました。おとなしくしているべきアンテナが開いてしまったんです。そういうことが起こるとは全く予想していなかったので、正直、驚きました。

それから、結果を大急ぎで報告しました。そしたら、振動試験の前後で、みんな、手の平を返したように、態度が豹変したんですよ。アンテナが開いたときもびっくりしたけど、これにもびっくりしました。電磁プラジャーを使うと、再現性があるから、絶対これでいこうって言っていたのに、電磁プラジャーなんてとんでもないっていうふうになったんですよ。

それで、また、ニクロム線に電流を流して熱で溶かすという機構に変えました。もともと、このアイディアはあったんですが、ナイロン線を毎回結びなおさないといけないので、再現性が電磁プラジャーほどはありませんでした。ナイロン線ですか?釣り糸です。丈夫でいいですよね。よく使うので、研究室で大量に買ってあります。ニクロム線にどれだけ電流を流せばよいか、というのは、膜展開衛星の研究を卒業設計でやっていたので、そのときの経験が役にたちました。東急ハンズの店員さんが持っていた「発砲スチロールカッター」の資料に、ニクロム線の長さと何かの関係を示したグラフが載っていて、そこから計算できました。もちろん、キューブサットのときは、間違いがあっては大変ですから、自分たちで何度も実験して、実証済みの数値を使いました。

  証言:津田 雄一(つだ・ゆういち)
カンサットの時に比べると、余裕の振動試験だったと思います。カンサットのときは、ほとんど全員総出で行ったような記憶があります。緊張しまくりでした。 なぜ電磁プラジャーを改良しようと思わなかったか、ですか?そりゃあ、ダメなものはダメですよ。アンテナの展開はものすごく重要なことなので、一回でも試験でダメだったら、確実なものに換えるのが当然です。ニクロム線のアイディアは、もともとありましたし、悪くはなかったんです。ただ、糸の結び方が違うと、結果も少し違ってくるんです。それで、毎回同じ人が結ぶようにしていたと思います。けっこう気は使いましたね。