キューブサット打上一周年に寄せて
 ― 開発者・運用者のコメント ―

酒匂 信匡(さこう・のぶただ)
この1年XI-IVが元気に過ごせて一安心です。
今回のプロジェクトが次の新しい興味を引き出すという好循環に入った一方で、XI-IV自身からまだまだ収穫が上がるので今後も楽しみです。
皆の努力が形作った幸せが長く続くことを祈っています。
いつの日かXI-IVの様子を見に行きたいものです。

中村 友哉(なかむら・ゆうや)
1年前のロシア・プレセツクの打ち上げセンター、日本に情報を送るために緊張しながらPCに向かっていたことが懐かしく思い出されます。1年もの間元気でいるなんて、しかもあんなにきれいな地球の画像を送ってきてくれるなんて、当時のいったい誰が予想できたでしょうか。開発に関わってきた身として、この大きな成果を非常に誇らしく思います。また画像配信サービス(さいめーる)を通して多くの方から激励や感動のコメントをいただき、XI-IVが世界中から広く愛される衛星になれたことで私たちは勇気付けられ、それが次の衛星プロジェクトへの原動力となってきました。この素晴らしい日を機に、2005〜2006年に打ち上げを予定している中須賀研の次世代超小型衛星PRISMではXI-IV以上の成果を残し、さらに多くの方に感動を届けられる衛星にすることを、PRISMのプロジェクトマネージャーとしてここに誓いたいと思います。

桑田 良昭(くわた・よしあき)
優秀な先輩同輩後輩と一緒にCubesatの開発にかかわれたことは、一生の思い出です。あれに勝る経験は今後もなかなかないでしょう。そして、みんなの魂がXIに乗り移ったからこそ、こんなによく動いてくれているのでしょうね。うれしい限りです。

永島 隆(えいしま・たかし)
ちょうど1年前、ロシアでのXI-IVのロケットへの取り付け作業でのこと。
「頑張ってこい。」という祈るような気持ち、「もう生のXI-IVを見ることはできないんだ。」という名残惜しい気持ち、「分離機構はちゃんと動くだろうか?」という一抹の不安。いろんな気持ちが交じり合って、なんともいえない気分でした。
そして迎えた6月30日。最初の電波は自分たちで受信したい、と思っていたけど、日本上空に来る前にヨーロッパのアマチュア無線家の方から「XI-IVのビーコンが聞こえたよ」、とのお知らせ。「あぁ、良かった。」とひとまず安心するも、一番手柄を逃したような、これまた複雑な気分。
あれから1年、特に大きな問題もなく動き続けているとは予想以上の頑張りです。
えらいぞ、XI-IV!
今後ともXI-IVと現在開発中の弟分たちを温かい目で見守っていただければ幸いです。

中須賀 真一(なかすか・しんいち)
打上直後のあまり芳しくない状況から、生きることは生きるだろうが、実験はあまりうまくいかないんじゃないかと危惧しましたが、ここまでできて本当によかった。学生諸君のがんばりのおかげだと思います。打ち上げ直後は、デコードできないとか、リセットが起こって画像が取得できないとか、コマンドが通らないとか、大変でした。基準電圧が違っていたために、値もめちゃくちゃでしたしね。実を言うと、不安で眠れないときもたくさんあったんですよ。
衛星がどれだけ生きるかについては、最初に通信できれば、かなり長く生きるんじゃないかと思っていました。でも、実験がうまくいくかどうかは別の次元の話です。こんなにきれいな画像がとれたことは、驚きですね。偶然とかラッキーということではなくて、開発段階で十分なことをやってきたからだと思います。工学は正直ですから。

山元 透(やまもと・とおる)
CUBESAT現役運用者の皆様、一年間の運用、ほんとうにおつかれさまでした。そして一年突破、おめでとうございます。みなさんが毎日運用しているのを、筑波で陰ながらメール越しに拝見していました。朝晩、丹念に運用し続けるみなさんの熱意と団結力に、日々励まされました。すばらしいです。
思えば学生時代、まだCUBESAT開発の途上、Stanford大学の作った小型衛星Opalが "A Year in Orbit!" と高らかに一周年を祝っているのをWEBで見て、すげぇなあ、と思ったものでした。当時、打ちあがって、宇宙でちゃんと動いて、一年間生き残るなんて、超えなければならない壁が多くて厚くて、とても遠い遠い存在に感じました。しかし今は昔、もうそこまで来ました。感無量です。
CUBESATは、現在運用されている世界最小の衛星ですが、それだけでなく、宇宙開発にとても大きなインパクトを与えたと思います。(「パンドラの箱を開けた」と表現した方もいます。)学生が「本当に製造まで」やった衛星であり、日本の「宇宙モノ」の常識を覆すリスクとコストの考え方で作られた衛星であり、ロシアでの衛星打ち上げや、以前は一見不可能に見えた様々な法規上の問題の突破、アマチュア無線家の皆さんとのコラボレーションなど、数多く画期的で刺激的なチャレンジを達成してくれました。
私にとっては、CUBESATをやったことは、仕事をそれで決めてしまったほどに大切な出来事なので、元気に宇宙で動いていてくれることが、本当にうれしいです。
HAPPY BIRTHDAY!

永井 将貴(ながい・まさき)
打上げ後、衛星との通信に成功する確率は4,5割だと思っていたので、1年たってもなお動き続けていることは信じられないと同時に、とてもしみじみと感じます。
僕は、今年の4月から半年間の予定でドイツに来ています。打ち上げ一周年をみんなと祝えないのは残念ですが、打ち上げ基地に一番近いところで一周年を迎えることができたので、ちょっとうれしいです。

船瀬 龍(ふなせ・りゅう)
打ち上げ当初は正直、一年間もつとは思っていませんでした.XIはよく 頑張ってくれていると思います.まるで自分の子供が元気に育っている ようで、とても嬉しいです. 来年の二歳の誕生日も無事迎えたいです.
津田 雄一(つだ・ゆういち)
打ち上げ直後の管制室.
「可視予想時刻まであと3分...」
「あと1分...」
「3秒前,2,1,0.第1可視です」
...しばしの沈黙.管制室に集まった3〜40名にもなる開発関係者が固唾を飲む.
まだかな?アンテナ追尾はちゃんとできているのかな?ドップラー補正はちゃんとされているか??遅いな...
「ピピーピピ.ピピピーピ...」
「きた,きた,きたー!」誰かが叫ぶ.同時にみんなの大歓声.
私はそのとき,全く動けなくなりました.全身にゾクゾクっと何かがこみ上げてくる.ビーコンの音は地上試験で何度も聞いていましたが,ドップラーシフトが微妙にかかった宇宙からのそれは,ちょっと音痴だけど,とてもとても美しい新鮮な歌声に聞こえました.「僕らは本当にやったのか??」「本当に宇宙で動いてるんだ!」実感は徐々に徐々に,感動とともにやってきました.
あれから1年,自分たちの作った人工衛星が,宇宙で生き続けている...4年前,CubeSatプロジェクトを立ち上げたとき夢にまで見た状況が,今現実になっている.しかも,完璧に,完全な状態で,XI-IVは今もなお宇宙から信号を送り続けている.

それはすべてが0の状態からのスタートでした.どうやって地球と通信するの? 宇宙で発電する方法は?自動的にシーケンスを動かすためには?宇宙の苛酷な環 境に耐えるためにはどうすればいいの?などなど,宇宙にモノを飛ばすための何 もかもが,私たちの勉強の対象でした.宇宙機関関係者,専門の先生方等,非常 にたくさんの方々から,宇宙の常識やノウハウを教わりながら開発してきた CubeSatですが,この開発と運用を通して,全く独自の衛星システムの設計開発 手法,運用技術を生み出すことができた,と自負しています.

この世界初の超小型衛星の開発チームを,プロジェクトマネージャーとして引っ 張って来られたことは,私の一生の宝物です.創造力と気違いじみたやる気を持 つ優秀な同輩後輩に何度となく背中を押され,エネルギーをもらって,ここまで 来ることができました.

運用を受け継いでくれている後輩たちは,自分たちの衛星を持っていることを日 常的なこととして受け止めているでしょう.私の中でも,XI-IVが宇宙で正常に 動作していることは,当たり前のことになってしまっています.あの感動はどこ へ??と寂しくなってしまいますが,それが進歩というものなのでしょう.その 後輩たちは,さらに気違いじみた,さらにワクワクするような人工衛星を作ろう としています.本当に楽しみです.

これからどんどん進化していくであろう,超小型衛星の世界,その第1歩に関わ ることができたことを,XI-IV君に心から感謝します.
Happy birthday, our XI-IV!!