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能代コンペ物語

もくじ

  1. 能代宇宙イベントの由来
  2. 山谷公民館の夜
  3. ハイブリッドロケット打ち上げ
  4. 開会式
  5. ローバーコンペ
  6. カムバックコンペ
  7. 閉会式
  8. 懇親会
  1. 物語の始まり―能代宇宙イベントの由来

    能代でロケット打ち上げやカムバックコンペをしてはどうか。こんな話が出てきたのは、昨年のことでした。2005年はペンシルロケット50周年ということもあり、その発祥の地である能代で宇宙のイベントを企画したいという、秋田大学の秋山演亮先生の熱意と行動力によって、能代宇宙イベント協議会(http://www.mono.akita-u.ac.jp/noshiro/)が発足。UNISECも参加することになりました。そして、昨年12月には秋田で候補地の下見と打ち合わせ。候補地は海のそばで、風力発電用の風車がたくさん並んでいました。風車があるくらいですから、風がかなり強く、カムバックコンペができるかどうかは不明でした。しかも、現地は背の高い葦が茂っていて、歩くのもままなりません。それから、年間の風速データを調べたり、草刈の方法を検討したり、実現に向けての努力が続けられ、地元の多くのボランティアの皆様のご協力のもとで、イベント会場が作られ、開催にこぎつけたというわけです。

    noshiro
    現地写真

  2. 山谷公民館の夜

    8月9日(火曜日)。イベント前日。続々と学生たちがやってきます。遠いところでは香川県からの参加。ほとんどの学生は、能代市が手配してくださった公民館に宿泊。ここは、もともと学校だったところを宿泊や自炊ができるように作り変えたそうです。静かで緑豊かな環境のよいところでした。70畳くらいの広い畳敷きの部屋があるのですが、140名もの人数を収容できそうには見えません。モデルロケットの打ち上げに参加される岩手中・高の化学部のみなさんもいっしょに宿泊。

    kouminkan
    写真:公民館全景

    2時過ぎに集まっている人だけでミーティング。その後、公民館から車で30分ほどかかる会場へ行き、カムバックコンペの会場下見と計測。同じ場所で行われるロケット打ち上げのためのランチャー設営が本番さながらに行われていました。集中豪雨の影響か、まだかなりぬかるんでいます。カムバックコンペ実行委員長の中須賀先生と学生理事の尾曲さん・和田さんは、靴とズボンをぐしょぐしょにしながら、葦の茂みをかきわけて計測。

    measure
    計測中

    夕食は地元の皆さんが心をこめて作ってくださった食事。テーブルには花が生けられていて、あたたかな心遣いが感じられます。カレー、豚冷しゃぶ、山菜料理、ナスの漬物など、盛りだくさんの献立が食卓に並びました。おかわり自由とあって、食欲旺盛な学生たちも大満足。

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    食事風景

    この日は、現地の下見に行ったり、機体の調整をしたり、各大学それぞれに準備に余念がありません。夜の8時過ぎに全体ミーティング。明日のスケジュール確認や仕事の割り振りをして、コンペの順番を決めます。天気予報によれば、夕方から雨が降るかもしれないとのことで、カムバックコンペの開催時間を一時間繰り上げることになりました。雨で中止になった、2003年の板倉コンペの苦い記憶がよみがえります。なんとか天気がもってくれることを祈りつつ、最後の調整に励みます。

    kominkan3
    準備風景
    meeting
    ミーティング

    人数が多くて、寝る場所も布団も足りません。廊下に毛布や座布団を敷いて仮眠をとる人、さらには車の中で寝たという人もいたようです。もっとも、寝るどころではなく、夜を徹して準備に励んでいるチームもあり、決戦前夜は無事に過ぎていきました。

  3. ハイブリッドロケット打ち上げ

    8月10日(水曜日)イベント本番。まずは東海大のハイブリッドロケット打ち上げです。朝3時に起床し、暗いうちに出発した東海大メンバー約40名が、ランチャーを設営し、準備にあたります。午前8時の打ち上げ予定でしたが、準備に少し時間がかかって、実際に打ちあがったのは9時近くになってからでした。

    来賓やモデルロケット打ち上げのために来ていた子供たちなど、多くの人が見守る中のカウントダウン。そこにいる人たちすべてが、息を詰めて、一点を見つめる瞬間です。

    打ち上げ成功
    launch

    打ち上げは見事に成功。拍手が起こり、歓声が沸きあがります。パラシュートがなかなか開かないように見え、「開け!開け!」の声があちこちから聞こえました。
    赤と白の大型パラソルのようなパラシュートは地面すれすれできれいに開いて、拍手喝采を浴びました。演出かと思いましたが、予定より少し高度が足らなかったことが原因だったそうです。

    パラシュート
    parachute

    今回の打ち上げは、この日と翌日の二回の予定。この日は「教育用ロケット」で、若手が中心になって製作。翌日の分は「研究用ロケット」で、技術開発要素を盛り込んでいるそうです。(なお、二日目も大成功したそうです)

    プロジェクトでは、いろいろな仕事が発生します。ひとつひとつの仕事をそれぞれの担当者が完璧にこなすことで、プロジェクト全体が生きてきます。瞬時に打ちあがるロケットのビデオ撮影は、それほど簡単ではありません。撮りなおしもできません。ビデオ撮影担当者は、この日のために、何度も練習して本番に臨み、見事撮影に成功したそうです。燃焼実験やロケットの解説など、興味を持って見に来られた一般の方のためのサービスも忘れないところがさすがです。

  4. 開会式

    ロケット打ち上げ終了後、ただちに開会式が行われました。 大学ごとにずらりと並んだ様子は、なかなか壮観でした。秋田県知事や能代市長のご挨拶もあり、テレビ局の取材カメラもあり、関心の高さをうかがわせました。

    開会式写真
    opening

  5. ローバーコンペ

    ローバーコンペは、国内初の試みで、ローバーにパラシュートをつけて高所から落とし、着地したローバーがパラシュートを分離して、目的地点に向かう時間ならびにスピードを競うものです。今回は、高所作業車を用い、高さ6〜10メートルのところから,ローバーを投下しました。クレーン車の免許をお持ちの秋田大学の秋山先生が自ら高所作業車を操り、ひとつずつ落としていきました。

    地面にぶつかる衝撃は予想以上に大きかったようで、落ちるたびに「グシャ」あるいは「ガチャン」という、あまり聞きたくない音が聞こえてきました。砂漠の固い地面に高度4キロメートルから落とすことになるARLISSを模擬するため、ローバーの着地点をアスファルトとしました。この結果、ほとんどの機体が着地の衝撃に耐えられず、ローバーのどこかが損壊するという事態に陥ったようです。この結果を十分に検討し,ARLISSに臨むことが重要と、今回のローバーコンペの責任者である東北大の永谷先生のお言葉をいただきました。

    <結果> 優秀賞:東工大高玉研チーム

    メンバーと高所作業車

    優秀賞受賞のローバー

    優秀賞を取ったこのチームは、人工知能を研究している研究室で、昨年初めて参加しました。昨年に比べると、飛躍的な進歩だそうですが、指導教官の高玉先生によれば、今のところ「同じところをぐるぐる回ってしまう」ローバーだそうなので、ARLISSに向けての更なる飛躍を期待したいところです。

    その他の結果は以下のとおりです。 ●日大チーム:ローバー名 「SAROS」
    GPSの不調でロボットが動作しなかったため,コンペ開始までに時間がかかった.
    1st Try: 競技時間終了間際に,高度10メートルより投下.着地後,パラシュート分離失敗.

    ●東大チーム:ローバー名 「じゃじゃ馬」
    1st Try: 高度10メートルより投下.着地後右キャタピラが外れ,動作不能.ベアリングをロスト.
    2nd Try: 地上よりスタートするが,キャタピラが外れ,リタイヤ.

    ●創大チーム:ローバー名「16(シックスティーン)」
    1st Try: 高度6メートルより投下.着地後GPSが脱落し動作不能.
    2nd Try: 高度6メートルより投下.パラシュート分離失敗で動作不能.

    ●東工大高玉研チーム: ローバー名「First Step」
    1st Try: 高度7メートルより投下.パラシュート分離成功.走行を行うものの,GPSの取得に失敗し,最後はコースアウト.
    2nd Try: 高度7メートルより投下.パラシュート分離失敗.PDAがリブートし,リタイヤ.

    ●東北大チームA:ローバー名「のこのこ」
    1st Try: 地上よりスタート.パラシュート分離成功.目的地点から13メートルのところまで走行.時間は3分4秒.
    2nd Try: 高度8メートルより投下.パラシュート分離失敗で動作不能.
    3rd Try: 高度8メートルより投下.パラシュート分離が成功するものの,スタビライザが曲がり,走行不能.

    ●東北大チームB:ローバー名「MIRO」
    1st Try: 地上よりスタート.パラシュート分離成功.数メートル走行.

  6. カムバックコンペ

    国内コンペとしては4回目(うち1回は雨で中止)のカムバックコンペ。120メートルくらいの高さまで気球をあげて、そこからカンサットを落とします。カンサットが自分でパラフォイルを操縦して、いかに目標地点に近づけるかを競います。人間が操縦するパラフォイルでは1m以内に近づけるそうですが、カンサットの世界記録は、45m。国内大会での記録は48mです。なお、偶然近くに落ちたという幸運を排除するために、制御履歴を審査員に示さなければなりません。審査員は、日大の宮崎先生と東海大の中篠先生。二回チャンスがあり、よいほうの成績で競うというルールです。

    係留気球の準備の際は、見にきていた子供たちも手伝ってくれました。毎年作っているUNISECのTシャツ着用の最年少者と思われる小学一年生も現れました。

    prepare
    気球準備

    boy
    お手伝い少年

    今回は、ネバダ州の砂漠で打ち上げ実証実験を行うARLISSの事前審査を兼ねているだけに、真剣さが違います。優勝した東大3年生チームは、当日の朝まで、うまく動かないといろいろいじっていましたが、本番では見事な滑空と制御を見せてくれました。先輩たちの技術を必死で吸収し、工夫を重ねた結果のようです。二位は日大。日大は、パラフォイルで着地してからローバーで目的地を目指すという、野心的なハイブリッド型です。この世界初の試みのカンサットは、ローバーコンペに出ていたので、一回目には間に合いませんでした。二回目の飛行では、絵に書いたようなカムバックを見せてくれました。三位は東工大3年生チーム。軽量すぎたのか、風を切って前へ進めなかったようで、あまり記録はよくありませんでしたが、制御はきちんとできていました。

    秋田大は初参加で、4月から開発にあたってきました。ROMがなかったので制御履歴は取れませんでしたが、制御したと思われるいい成果を出し、審査員特別賞を受賞しました。
    また、同じく初参加の都立工業高専はフレッシュな若者(たぶん最年少)2名+教官1名で参加して、がんばりました。前夜、公民館で必死の調整をして臨みましたが、パラフォイルの上に機体が載ってしまうという不思議な降り方をしたために、カンサットは操作ができませんでした。遠く香川からやってきた香川大チームは、パラフォイルがうまく開かなくて無念でしたが、どんなことも次につながる大事なレッスンになるでしょう。

    このコンペは、裏方が相当に大変でした。炎天下で気球の巻き取りをしたり、CANSAT落下位置を計測するために、葦の茂みを走り回らなければなりません。午前で実験の終わった東海大ロケットチームのメンバーが、ほとんど寝ていないままに、Comebackコンペでは、裏方として大活躍してくれました。

    <結果>  優勝:東大3年生チーム(記録:47m=国内新記録)
      2位:日大2年&3年生チーム(記録:61m)
      3位:東工大3年生チーム(記録:210m)
     審査員特別賞:秋大カンサットチーム

     
    1回目2回目
    秋田大118m △105m △
    東工大A160m △210m ○
    香川大 73m △35m △
    都立工業高専44m △69m △
    東大78m ○47m ○
    東工大Bcanceled36m △
    日大canceled61m ○

    ○:制御履歴あり
    △:制御履歴なし

    他に、東工大、東海大、東北大がカムバックではないカンサット実験を行いました。

  7. 閉会式

    幸い、天気予報が当たらなかったので、一日中晴天で、風もあまりなく、コンディションとしては最高でした。開会式のときと同じように全員が並びます。開会式との大きな違いは、顔や腕の色。みんな日焼けして真っ赤になっています。

    秋田県杯に能代市長杯と、すばらしい優勝カップを用意していただきました。UNISECの伝統ある(?)優勝カップは、東大→東工大→東大と、今回東大の手に戻りました。次回の福岡コンペではどこの手に渡るか、楽しみです。

    閉会式
    ending

    カムバックコンペで見事優勝した東大3年生の草川靖大さんは、優勝カップを手にうれしさいっぱいですが、「風向きがラッキーだったんです」と謙虚なコメント。

    草川さん
    kusakawa

  8. 懇親会

    能代には温泉がたくさんあります。各チームは、会場の後片付けを終えると、それぞれ好きな温泉に向かい、汗と埃にまみれたからだを洗い流して、夜8時に懇親会会場に再集合。畳敷きの大きな宴会場には、大きな丸いテーブルが15くらいは並んでいたでしょうか。能代市長をはじめとして、サポートしてくださった方々も同席していただき、参加者140名を超える「大懇親会」が始まりました。大学生の手作り宇宙開発に、当初より関わり、強力な推進者でもある、東大の中須賀先生は自らが始めた活動の広がりに感無量の様子。でも、すぐに司会役を買って出て、盛り上げ役に徹します。

    翌日の打ち上げ準備のために中座した東海大。「将来の目標は?」と聞かれて、「宇宙です!」という力強い言葉を残し、宴を後にしました。

    宇宙を目指す気持ちはどこも同じようです。秋田大が、「来年はアメリカでのARLISSに参加して、3年後には人工衛星を打ち上げたいです」といえば、東北大は「2年後に打ち上げます」。香川大は2007年に香川衛星を打ち上げる予定だそうです。

    カムバックコンペで優勝した東大3年生チームはあくまで謙虚。「パラフォイルチームは、今回は風向きなど運がよくて優勝できましたが、研究室の先輩はもっとすごいのを作っていて、ARLISSに参加される予定です。だから、僕たちを目標にしてはいけません」

    初参加の東京都立工業専門学校は、「初参加で、制御もろくにできず、残念な結果に終わりましたが、ジオスポーツの中台さんに感謝します」と、お世話になった方々への感謝の言葉を忘れません。

    ARLISSに2002年、2003年の二回、ローバーで参加している東北大の石上玄也さんがしみじみと、「ローバーはずっとウチだけだったのに、ローバーコンペができるほどに参加大学が増えて、うれしい限りです。」その東北大は、指導教官の永谷先生が「負けた気がしない」という、すばらしいローバーを作っています。「高いところから落としたらどうなるかを学んだだろう」という先生の言葉を胸に、さらにすばらしいものに改良していくに違いありません。

    日大の指導教官の宮崎先生は、「ARLISSの賞金、ポケットマネーで積み増します。だから、日大、取ってこいよ」世界初のローバーとパラフォイルの複合型カンサットで、栄冠を勝ち取れるでしょうか。

    ダークホースの創価大に老舗の東工大松永研。ローバーコンペで格段の進歩を見せた東工大高玉研。いずれも、ARLISSまでの一ヶ月間に相当のがんばりを見せるに違いなく、近い未来が楽しみです。

    小さな一歩を、勇気を奮い、知恵を絞って、一人ひとりが進むことで、全体としてみると、信じられないほどの大きな歩みになっていることがあります。今回の能代コンペは、まさにそのような歩みを示したものといえるのではないかと思います。

    <文責:川島>


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